Into the twilight - W. B. Yeats

TWILIGHT FISHING(SALTIRE)

「夜明けの中へ」 - W・B・イェイツ

 個人的に超大好きな詩。なのだけど、いろんなイェイツの詩を和訳した書籍を読み漁っても、この詩の和訳に関してはいまいちピンとこない、それどころか「……どういうこっちゃ、この訳詩は……」っていうのが多く不満だったので、いっそ自分で訳してみました。

 とはいえ平常通り、意訳は控えめでなるべく直訳っぽい雰囲気を心がけていますので。日本語だと頓珍漢で読みにくいと思うけど、まあ参考までに。


和訳 原文(English)
廃れた時代の中で、擦りきれ疲れた心よ、
Out-worn heart, in a time out-worn,
正悪の網目を越えて、ここへおいで;
Come clear of the nets of wrong and right;
心よ、灰色の夜明けに再び微笑もう、
Laugh heart again in the gray twilight,
再び、朝露の中で歎息するんだ。
Sigh, heart, again in the dew of the morn.
和訳 原文(English)
お前の母なるエーラ老いを知らない
Your mother Eire is always young,
露は常に輝き、そして夜明けは灰色だ;
Dew ever shining and twilight gray;
たとえお前の希望が打ち砕かれ、お前の愛が破れたとしても、
Though hope fall from you and love decay,
お前が中傷の炎に焼かれたとしても。
Burning in fires of a slanderous tongue.
和訳 原文(English)
心よ、ここへおいで、丘々が連なるこの地へ:
Come, heart, where hill is heaped upon hill:
そこには神秘的な愛があり
For there the mystical brotherhood
太陽と月、窪地と木々
Of sun and moon and hollow and wood
そして川と細流が互いを支え合っている;
And river and stream work out their will;
佇む神は彼の孤独な角笛を風にさらし、
And God stands winding His lonely horn,
時と世界は延々と流れ往く;
And time and the world are ever in flight;
そして灰色の夜明けは愛より優しく、
And love is less kind than the gray twilight,
朝露は希望よりも貴いのだ。
And hope is less dear than the dew of the morn.

※補足

セミコロン「;」とコロン「:」について:
 日本語にはない記述方法ですが、こいつすごい便利なんでそのまま和訳にも流用してます。慣れないうちは違和感あるだろうけど、セミコロンに慣れてね。

twilight:
 基本的には「薄明るい時間帯」という意味。転じて「夕暮れ」や「夜明け前」。
 この詩には特段時間の記載はないけど、「朝露」が繰り返し登場するんで、きっと「夜明け前」だろうなと断定し、その前提で訳しています。

エーラ(Éire):
 エーラ、ないしエージャ。アイルランド語で「アイルランド島」のこと。
 なんかアイルランド語の綴りって、英語と違ってちと奇妙なんですよね。発音を聞いたときに、綴りからは到底連想できない音にビックリすることがあります。

老いを知らない:
 常若、っていうワードをぶちこみたかったけど、いまいち続きの文章が思い付かなくて断念。このような表現に。
 とかなんとか、指輪物語で有名なトールキンの世界観に出てくる、エルフを想像してもらえれば分かりやすいと思う。森の奥方ガラドリエルみたいな、神秘的で、超然とした雰囲気。ああいうのを、きっと指していると思う。多分ね?

孤独な角笛:
 正直に言うと、よく分からない。けれども、牧畜に関係ありそうな感じなのかな? またはキリスト教、もしくは両方。それに羊飼いといえば角笛、だし。笛を吹いたところで、反応してくれる羊(ないし、神々の物語を晴明に覚えている人間)が居ないよ、的な?
 どれにせよ、なんだか寂しい雰囲気って感じっすね。


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