【開国神話】

「開国神話」 - @箱庭の序幕


 「@箱庭の序幕」にて、少しだけ内容が描かれているのが「開国神話」です。基本的には、主神《秩序》と五大女神による国づくりの話。本編には、シアル王家が編纂した「新約神話」と、旧オブリルトレ王家が編纂した「旧約神話」の二種類、その第一章だけが語られてます。

 そんで本編では特に解説出来ていなかったので、ここでざっと説明。「新約/旧約」の違いを簡潔に言うと「オチが異なる」のです。

 「旧約」は、闇の女神《幻影》(=神格化された旧オブリルトレ王家女王、ユイン一世。本編のユインは、三十三世にあたります)がサラネムに降り立ち、山に住まう民(=鷹狩りの一族ラムレイルグ、白い射手の一族シャグライ)に大地の豊穣を未来永劫誓うことで終わります。「大地」というのが、どこのことを指しているのかというのは、特に記されていません。(……もしくは、長い年月の間に忘れ去られてしまった?)


 ですが「新約」のほうだと、闇の女神《幻影》がサラネムに降り立つと、サラネムの山だけに豊穣を約束することになっています。豊穣の誓いがたてられた場所が、限定されるのです。そして《幻影》は、 砂漠の民ソロゥラム(本編で言うところの《神託ノ地》に住んでいたとされる、黒馬アルヴェンラガドで砂漠を駆けた放牧の一族。後にアルヴィヌ領北部の定着民となる、ラファスアルの民の前身。パヴァルなんかは砂漠の民ソロゥラムの子孫です)の怒りを買うことになります。あげくの果てに、砂漠の民ソロゥラムは《幻影》を「悪魔」呼ばわり。そして彼女は以後、その見た目から「銀色で紫色の悪魔」と語られることになります。

 すると、そんな 砂漠の民ソロゥラムを憐れんだ光の女神《光帝》(=神格化された初代シアル王家女王シサカ。元となった人物は、あまりの素行の悪さからサラネムを追放されたただの女性です)は、英霊ラントと共に砂漠に降臨(⇒降り立った場所は、後に《神託ノ地》と名付けられる)。そして砂漠の民ソロゥラムに対して大胆な発言をするのです。

「我を王とし、崇め奉れ! さすれば汝らに、道を示さん!」

 砂漠の民は迷わず《光帝》さまを崇め奉り、一族を導く「王」としました(ただし新約神話の中でのお話です! ……実際の史実によると、女王シサカと砂漠の民ソロゥラムの首長はかなり揉めた模様。シサカさまは首長を殺して、長の座を横取りしたと言われています)。そして晴れて王となった《光帝》さま、迷わず山の民へと一揆を企てる。奴らは実りを独占している、我らにも分け与えられて然るべきではないか、と。そんな《光帝》さまの有難いお言葉に、 砂漠の民ソロゥラムたちの士気が上がりました(実際は、従わざるを得なかった。逆らうと家族もまとめて殺されるので)

 そして砂漠の民ソロゥラムの男たちは王たる《光帝》の号令を合図に、武器を携え、いざ山へ進軍! 英霊ラントは超強い! どんどん山の民を蹴散らしていく!! けど山の民も負けてない! 数は砂漠の民のほうが多いけれども、山の民は上等な装備を持っているうえ、戦士一人ひとりが馬鹿みてぇに強ェ!! このままじゃ負ける、砂漠の民は負けてしまう! そして《光帝》さまが超取り乱したとき、奇跡が起きます。

 なんと!! 無駄に散り逝く戦士たちを嘆いた「銀色で紫色の悪魔」氏が、自ら《光帝》さまのもとに出頭してきたのです。



「無駄に血が流れゆく光景は、もう見ていられない。
 以後は砂漠の民にも、実りを分け与えることとする。
 我のこの命を以ってして、汝らに誓おう。
 故に、我が首を斬り落とせ。
 それで全てを、終わらせようではないか」


 そうして《光帝》さまは憎き「銀色で紫色の悪魔」の首を討ち取り、山との貿易権も獲得し、砂漠に凱旋。ウェーイウェーイと浮かれながら、ちょっと砂漠を歩いてみればオアシス(=ディア湖)を発見! そんなこんな最高に気分が良い《光帝》さまは、オアシスを見て開国宣言。ここに国を開く、と言ったのです。それが後に「王都ブルサヌ」となっていきます。そこでめでたし、めでたし……――と言いたいのですが。物語には、若干の続きがあります。

 開国で浮かれる《光帝》さまから視点変わって、ディア湖のほとりにあった鬱蒼とした森にて、討ち取った「銀色で紫色の悪魔」の首を埋葬する英霊ラントにスポットライトが当たります。

 少しだけこんもりと盛りあがった丘陵に、英霊ラントは穴を掘って丁重に「銀色で紫色の悪魔」の首を埋めるのですが。そこで彼は、不穏なことを口走ります。「黒い烏が舞い降りると〜」っていうアレです(詳細は「C白への融解/17章2話」のイゼルナさまの台詞にて)

 ……と、そこからは原典自体が失われてしまっているために不明。そして開国神話の原典に当たる、古代シアル文字が刻み込まれた巨大な石板群は王宮内蔵書館の地下にて、厳重に保管されているとかなんとか。

 因みに石板群を管理をしているのはハゲジジィこと文ノ大臣ルディガンド卿ではなく、まさかの政ノ大臣シルスウォッド卿。全ての石板群をたった5年で解読して、開国神話として纏めてのけたのも、またシルスウォッド卿です。それがシルスさん20代前半の頃のお話です。彼は重度の歴史オタクにして遺跡マニアにして古文書収集家という一面も持つ男なので……。


 そんなこんなで「開国神話」。あくまでこれは架空の物語に出てくる、架空の叙事詩です。