神ノ禍 @箱庭の序幕

神ノ禍 - 箱庭の序幕 -



あくまでこれは私の仮説でしかないが、
この世界はきっと、いや絶対といって良いほどに、
嘘と幻想で塗り固められて作られた泡沫の夢である可能性が高いのではないのだろうか。
何もかもが、巧妙に作られた嘘で、そして幻想。夢で幻で、決して現では無い。
私達は誰かの夢の中の住人で、
要するに私達は、私達が御伽話と呼んでいるそれの登場人物達とさして変わらんほどには嘘臭くそして胡散臭く、
それ以前に本来その場に存在してはいない存在なのではないのか、という訳だ。

――――〈大神術師アル・シャ・ガ〉の手記より

【序章 聖獣使い】


それは太古の昔のこと。この世界は闇だけが全てを満たす、何も存在しない空間だった。
けれどもある時、そこに主神《秩序ウカル》が現れる。《秩序ウカル》は大地を造ったのちに天界を造り、大地を統治する五柱の女神を造った。
そうして産まれたのが、火を統べるもの《業火シレイヌ》、風雷を統べるもの《息吹アニェン》、水を統べるもの《霊水ヴィテナ》、光を統べるもの《光帝シサカ》、闇を統べるもの《幻影ノクス》である。

――――「開国神話  第一章 天地創造」より

【第一章 箱庭の夜】


まず始めに大地に降り立った女神《息吹アニェン》は地を駆けては風を起こし、大地を削って崖を作り、そして山と平地を生みだした。
次に大地に降りた女神《霊水ヴィテナ》は、荒涼とした大地に恵みの雨を齎しては川を作り、川の水は生命を生み、そして育んだ。

――――「開国神話  第一章 天地創造」より

【第二章 放蕩の燕、獅子を追う】


けれども世界は、暗闇に満ちていた。川の水より生まれし生命は、常に暗い闇に怯えていたのだ。それは人間という種族に、顕著に現れていた。
それを見かねた女神《業火シレイヌ》は天界より大地に降り立ち、人間に火を齎した。
その時より人間は、火を扱うようになった。

――――「開国神話  第一章 天地創造」より

【第三章 紅の華、夜半に咲き誇る】


それでも世界は、まだ暗闇に満ちていた。いくら人間が火を焚こうと、世界を包む闇は払えなかった。
それを見かねた女神《光帝シサカ》は、光の衣を纏って空を翔けた。
その時から世界は、明るく照らされるようになった。

――――「開国神話  第一章 天地創造」より

【第四章 ギャランハルダの踊り子】


世界は明るくなった。けれども生命たちは、常に明るい世界に困っていた。ある者は世界が明るいと眠れないと言い、ある者は暗闇の中でないと自分は動けぬと言った。
それを聞いた女神《幻影ノクス》は、女神《光帝シサカ》にこう提案をした。
一日の半分は光の衣を纏った《光帝シサカ》が空を翔け、もう半分は闇の衣を纏った自分が空を翔けよう。そして光が満たす時間と、闇が覆う時間を設けよう、と。
けれども《光帝シサカ》は、その提案に応じなかった。

――――オブリルトレ家編纂「旧約神話  第一章 天地創造」より

【第五章 神なる血脈】


女神《光帝シサカ》は提案に応じない。けれども生命たちは、常に明るい世界に困っている。そこで女神《幻影ノクス》は、女神《光帝シサカ》に別の提案をした。
自分は闇の衣を纏って、女神《光帝シサカ》は光の衣を纏って、空を舞台に追いかけっこをしよう。どちらかが、どちらかの衣を奪ったら負けだ、と。
女神《光帝シサカ》はこれに乗った。そして二人の女神は空の上で、今日も終わらぬ追いかけっこをしている。
それにより世界には、明るい昼と暗い夜が齎されるようになった。

――――オブリルトレ家編纂「旧約神話  第一章 天地創造」より