【第二章 放蕩の燕、獅子を追う】

4 招かれざる客


 さて、この場に充満しているピリピリとしたこの空気は、どうやって入れ替えるべきなのか。
 別に自分のことでもないのに、とスザンは心の中で愚痴を零しながらも、重苦しい空気の中、重い頭で回らない思考を必死に回そうと試みていた。
 机を挟んで、対になる形で向かい合う二人。どちらも白い髪で、紫色の瞳を持っていることから、サラネムの山奥に住まうと言われているシャグライ族の出であることは分かっていた。ただ、こいつら……ではなく、この二人は、それだけの関係ではなかったらしく、元は婚約者同士だったという。ただし、片方は断固として認めてはいないのだが。
 一人――じと目のユイン――はタラタラと、「俺は別にお前と結婚なんかするつもりは毛頭なかったし」だの、「婚約云々ってのはお互いの親が勝手に取り付けたものであって」だの、「俺は絶対に認めない」だの、「というか、それ以前に俺はお前のことが大嫌いだった」だのとなんだのと、あまりにも酷すぎる言いわけを述べ続けている。もう一人―――ロンディン・ウェルザポという、シアル第二分家当主イゼルナ妃に仕える侍女―――のほうもまた、「長老が言っていたんだ!」や「長老の命令は絶対よ!」という部族の掟のことしか議論に出さない。だが、ユインのほうは同じ部族の出でありながらも、その掟についてはあまり関心がないらしく。「掟なんざ知らねぇよ、そんなことはどうだっていい」やら「知らねぇ興味ねぇクソ食らえ!」と一蹴するばかりで。
 それはもう……――
「……このままじゃ、埒が明かないじゃないか」
 議論が始まってから、約一ダルほど経ったのだろうか。互いの主張は一度も交差することなく、平行線のまま、時間だけが過ぎていた。
「あ?」
「は? なに、何なのよ、アンタ。部外者のクセに」
「いや、なんでもないです、どうぞ続けてください……」
 しゅんと肩を竦めるスザン。頭の中は、面倒臭いという思いだけが支配していた。
 ヴィディアは婚約者が待っているという王宮内のある一室まで案内しただけで、あとはスザンとユインの二人を残し、早々に居なくなってしまっていた。そしてこの口論に、どういうわけかスザンは巻き込まれていたのである。
 ただ。
 本来ならば、今こうして目の前で繰り広げられている議論に、スザンはなんの関係も関わりもないはずであった。
「私は、長老にアンタを山に連れ戻すって誓ったの! シャグライの民の誓いは絶対よ、だから!!」
「だーから、余計なお世話だっつってンだろーがァッ! 俺が、俺がどんな思いであの家から逃げ出したのか、それを知らないようなヤツが突然しゃしゃってくるな! 迷惑なんだよ!!」
「あのね、あんたにはシャグライの」
「シャグライとしての誇りはないのか、だろ? どいつもこいつも、常套句みたいに言いやがる」
「じゃあ、どうなのよ!」
 突然立ち上がったユイン。どうやら頭に血が上りきっているようで、普段はあんなにも真っ白な顔が、今では火照っているかのように赤く染まっている。そしてユインはスザンなどには目もくれず、ロンディン相手に怒鳴り散らした。
「俺には誇りも矜持も無いし、ンなモンは必用ねぇわ! そもそもシャグライなんざに誇りもクソも、ハナから存在しねぇんだよ!! オブリルトレ王家はとうの昔に地に堕ちた。シャグライは落ちぶれた王家の、成れの果ての姿なんだよ!!」
「なっ、なによ、オブリルトレって……。そんなの、知らないわよ!!」
「知らねぇなら尚更だ。ありはしない誇りや矜持を、まるであるように騙るんじゃねぇ!!」
「……じと目さん……?!」
「いいか、お前らが敬い讃える族長とやらは馬鹿だ、愚かだ、ゴミ以下だ! ヤツは異形を、未知のものを異常に恐れ、そして排除したがる。それも最低のやり方でな! お前らが馬鹿にし見下し、嫌いに嫌ってた脳筋のラムレイルグの奴らの方が、よっぽど人間的でまともだったさ!」
 よっぽど、彼女の言葉が癇に障ったのだろう。ユインの顔からはいつもの気だるげな表情はどこかに消え、怒りに満ちたキツイ表情へと変貌していた。ちょっとムスッとしている、いつものあの顔とは比べ物にならない。普段のユインと今のユインは、全くの別人であるようにもスザンには思えた。
「そ、そんなことないわ! 長老様は、とても……――」
「あの長老に、俺は追い出された! 蔑ろにされ、詰られ、罵られ、何もかもを否定された! そんなクソ野郎がのさばる場所に、今更戻れるわけがあるか!」
「長老様が、そんなことするはずがないわ!」
「やるさ、あのクソジジィならな。自分の王座を守るためなら、なんでもやるだろうよ」
 ふん、とユインは鼻で笑う。「……これだから、村の人間は大嫌いなんだ」
「あのね、聞いていれば何をボロクソ言ってくれてるんだか………」
 ロンディンという女性の口元がピクピクと引き攣り始めた。なんか、とにかく、危なさそう。直感でそう感じたスザンは、本能的に後退さる。するとスザンの背後から、シクの声が聞こえてきた。
「ここは危ない。一旦出ましょう、スザン」
 どこに行っていたんだよ、という疑問はさて措き。首から上だけの姿でスザンの前に現れたシクは、早くここを出ましょうとと訴えているかのように、スザンの服の裾を口に咥えて引っ張ろうとしている。
「僕もそう思った。出よう」
 スザンはそっと席を立つと、足音を殺して出入り口の扉の前まで移動する。そして扉の取っ手に手を掛けたときだった。ユインの怒りと焦りが入り混じり、震えに震えた声がスザンの名を呼んだのは。
「おい、スザン。お前どこに行くつもりだ」
「どこって、外ですよ。僕はお先に、失礼させてもらいます。部外者が居ないほうが話しやすいでしょうし。ね、シク」
「はい」
「待てよスザン! 逆だ逆! 部外者に居てもらわねぇと俺が殺されッ……――」
「なに余所見してンだよ」
 バンッ!と叩かれたガラス板の机。机を容赦なく叩いたのは、ロンディンだった。机の脚は目に見えて分かるほどに軋み、敷かれたガラス板には罅というより亀裂が走っていた。
「話はこれからだ!」
 怒りに満ちたロンディンのその声に怯え、膝が動かなくなるスザンとシク。手をかけている扉の取っ手を捻りさえすれば、すぐにでもこの場から逃げ出すことができるというのに、何故だかそれができないのである。思うように体が動かない。それがとても、もどかしい。それがとても、怖い。
「何が何でも連れ戻す、どんな手段を使ってでも」
「お前と話すことは、何もない」
 再び机を、先ほどよりも更に強く叩くロンディン。遂にガラス板は木っ端微塵に粉砕され、机の脚は小さな木片となり辺りに散らばった。反射的にスザンの口からは、ヒッ……という息をのむ音が出る。

 一体、誰がこの机を弁償するのだろうか。
 ……まあ、僕には関係のない話だ。多分。

「アンタね、育ててくれていた親や長老様に、その言葉はないんじゃないのかしら」
 ロンディンの眉間に、ぐっと皺が寄る。だがユインの眉間にも更に深い皺が刻まれ、スザンもその言葉には眉を顰めた。

 育ててもらった親に、その言葉はないんじゃないのか。

 そんな言葉はスザンも、よく耳にしたものだ。だがスザンは思う。それは親に大事に育てられてきた人にしか、言ってはいけないと。世の中には、気がついた時にはもう親が居なかった人も居れば、親が居ても、その親に暴力を振るわれていた子供も居る。だから、当たり前のようにそれを振りかざすのは、おかしい。少なくともそれまでのユインの話を聞いていた限りでは、それはユインに対して、絶対に言ってはいけない言葉だ。
 そう彼女に、言いたかった。
 でも言えなかった。
 何故なら、目の前で散っていったガラス板を見せつけられた今、第三者がどうしてそれを口出しできようか。
「確かに、あの家でもイェガンは除外だ。イェガンは何も悪くないし、恩がある。だが俺は、アイツらに育ててもらった覚えはない。殴られた記憶なら、数えきれないほどあるがな。それに俺を育ててくれていたのは、メズンとラムレイルグの連中だった。親じゃない。血縁から言えば祖父に当たるであろう長老とやらでもなかった」
「そんな話、聞いたことなんて」
「無いだろうな、そりゃあよ。お前は、俺の事情につい最近首を突っ込んできたようなもんだからな。俺の何が分かるってんだ!! それで知ったような口を利いてくれるな!!」
「……アンタは、帰るの。アタシと一緒に、サラネムへ、村へ、帰るの!!」
「俺は、何が何でも戻らない!! あんな地獄は、もう二度と御免だ!」
 顔は明らかにビビッているのに、それでも尚、虚勢を張り続けるユイン。
 ここまで虚勢を張ってでも、故郷には帰りたくないわけがある。
 だが彼女にはどうやらそれが、全く以て伝わっていないようだった。
「アンタ、そうやっていつまで我儘を言っているつもりなの?」
 ユインの顎から大粒の、玉のような汗が一滴、音も立てず静かに木の板が張られている床に零れ落ちる。
「そうだ、これは俺の我儘だ。自分の身を守るために、必要な我儘だ」
 ロンディンの握りしめられた拳に、ピキッと血管が浮かび上がる。
「ならば生死を問わず、アンタを連れ戻すまでよ!」
 そう叫ぶや彼女は、ユインの髪を乱暴に鷲掴み、そして床にその頭を強く、それはもう強く、まるで投げつけるかのように打ちつけた。だがそこは《光帝シサカ》に認められし十の剣が一剣、かの剣豪から鬼のような指導を受けている〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉である。即座に受け身を取り、最悪の事態は間一髪で逃れた。が、床に背中を強く打ち付けた際に、石の床が大きく凹んだ。それとボキッという、出来れば聞きたくはなかった音も聞こえた気が、スザンにはしていた。
「……ィッテェ……」
 イッテェ、で済むような状態じゃないでしょうに、アンタ。そう毒突くスザンの足は、立ち竦んだままどうにも動きそうな気がない。
「どうする、今からアンタを血祭りにあげてやってもいいのよ?」
 ユインの足首のあたりを、割と踵が高い靴の底でグリグリと踏みながら、凄絶な笑みを口元に浮かべるロンディン。その様子は、嗜虐の女王様そのものだった。
「……やれるモンなら、やってみろ! それでも俺は死なないし、山にも帰らねぇからな!」
 もうやめとけばいいのに、とスザンが思った矢先。スザンがずっと手をかけていただけの扉が、扉の向こう側から唐突に開けられる。扉が顔にガンッ!とぶつかった。
「痛いなぁ、もう……」
「……なッ?! お前、居たのかよ!?」
「居ましたよ! 酷いですね、もう」
「そんなとこに居っから悪ぃーんだろーが」
「それも、そうですね……」
 入ってきたのは〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉が一剣、〈咆哮ベイグラン〉ファルロンと〈風雷ノ聖獣使いシラン・サーガ・キウ〉のクルスム、とその聖獣・ウィクだった。
 山の出の人間が、二人も増えた。それもなんと、じと目の援軍だ。
「……てかヨ、随分と派手に暴れたようじゃねぇか」
 落ち着いた低い声でそう述べたクルスム。彼女は冷静にその場の惨状を観察しながら、静かにロンディンを睨んだ。
「アンタのその、ブチギレるとすぐ馬鹿力が発動しちまうクセ。メズンも言ってたが、やっぱ制御できるようにしたほうが良いんじゃねぇのか? ただいたずらに、人を傷つけるだけだぞ」
 これだからロディー嬢は危なっかしくて見てらんねぇぜ、とウィクはそっぽを向く。
「うるさい。ラムレイルグのあんたらに、言われる筋合いはない」
 女同士の睨み合いが始まる、と思いきや。その雰囲気を、気拙く笑うクルスムがぶち壊した。
「違う違う、アタシはあんたと今更張り合うつもりは微塵もねぇよ。ただ、その馬鹿力だけは抑えられるようになったほうが、ロディー、あんた自身の為になるんじゃねぇのかって言いたいだけさ。でも、ユンに本気で手ェ出すってンなら、アタシらも容赦はしねぇぜ?」
 ユンを山に帰すわけにはいかないのさ、とクルスムは言う。一瞬だが空気が綻んだところで、スザンはすかさず口を挿んだ。
「あの、すみません」
「んあ?」
 床に倒れ込んだユインを救出しながら、スザンを見やるファルロン。
「あの、僕……帰っていいですか?」
 今来た二人と、さっきまで平行線の論争を繰り広げていた二人は、どうやらお互いに知り合い同士であるらしい。ならば本来は蚊帳の外であるべきはずのスザンが、ここに残る必要もないのではないか。そう思えたのも一理あるが、一番はやはり、怖い女性が二人も居るこの空間に長居したくないという思いだった。
「おう、構わないぜ」
 ファルロンはユインをひょいっと担ぎあげながら、そう言う。右脚の脛から先がありえない方向に曲がっているユインの脚を見るなり、スザンは背筋をぶるぶるっと振るわせた。
「アタシらとしても、ちょっと部外者にゃ居なくなってもらったほうが話しやすいってもんだしな」
 クルスムもそう言い、ウィクも頷く。それではお先に、とスザンはその場を立ち去った。
「結局、僕が居た意味ってあったのかな」
 扉を閉め、廊下に出たスザンはそう呟く。
「さあ、私には分かりませんね」
 今だ首だけの姿で彷徨うシクは、スザンの呟きにそう返した。
「それよりさ、シク」
「はい、なんでしょう」
「その……さ。首だけしか見えてないのは、ちょっと不気味だから、さ。姿を消すか現すかのどっちかにしない?」
「ああ、すみません。忘れていました……」






「どうだったか、あれの様子は」
 夜も更けた宵ノ三刻サ・サジュテ(午後十一時)。人が滅多に訪れることもない王宮の裏山。樹齢数千年の老木の根の下、ぽっかりと開いた大穴の中にひっそりと佇む、岩を切り出しただけの古びた祭壇。そんな祭壇の上には、我が物顔で脚を組み座る〈大神術師アル・シャ・ガ〉の姿があった。
「特にこれといったこたぁ無かったぜ」
 〈大神術師アル・シャ・ガ〉の座る横に膝を折りながら、大きな鳥はケケッと笑う。〈大神術師アル・シャ・ガ〉に対して、簡潔にそれだけを報告したのは、闇を溶かしたかのような漆黒の羽をバタたつかせる、巨体を持つ烏――自称、かつては闇の女神《幻影ノクス》に仕えていた元〈闇ノ聖獣シラン・ソ〉のメク――であった。
「そうか」
「けどな、俺が思うに宿主はアイツだぜ」
 ほう、と興味深げに目を細める〈大神術師アル・シャ・ガ〉。「どうしてそう思った」
「武神ノ邪眼を誰が宿してるかーなんつーのは、オイちんにゃァすぐに分かンのサ。で、それはお山の女王サマってわけヨ。んでヨ、分離はもう手遅れだろうなァ。体に深く、深―く染みついてる。下手に抜いちまえば、宿主が狂っちまうだろうヨ」
「……ふむ、女王か」
「そうヨ、アイツ。ただ近付けんのヨ。なにせ守りが堅いのサ」
「正体は頑なに現さない、というわけか」
「まァヨ、それも一理ある。だがな、それ以上にあの龍が邪魔でヨ。オイちんの行くとこにゃァ必ずヤツが現れンのサ。暇なもんだぜ、ヤツもヨ。……それに、あんなスラムの溝鼠どぶねずみにゾッコンたァ、あいつも趣味が悪ぃとしか言えねぇぜ。別次元に引き離されても意地になって追いかけて来る呪縛の具合、あの男も憐れとしか言えねぇな……」
「メク?」
「いいヤ、なんでもねぇヨ。ただの独り言だァ」
「そう、か。ならば、いいんだが……」
 武神ノ邪眼。それはただの“眼”ではない。
 それ単体が生物で、そして意思を持つ。
 だが、石なのだ。
 予見の石であり、千里眼であり、人の手に渡れば悪の根源にもなる。
 それは、本来人には宿ってはいけない、神の呪具だから。
 遥か彼方の景色を見ることが出来れば、過去や未来まで見通すことも出来る。だがその反面、宿主の肉体と魂を徐々に蝕んでいくのだ。
 けれどもそれは、「命を食らう」というものではない。
 次の器が見つかるまでの間、宿主を“半永久的に生かし続ける”ということだった。
「……邪眼の尻尾がようやく掴めたというのに、時すでに遅しということか」
 深い溜息を一つ漏らす〈大神術師アル・シャ・ガ〉。
「こればかりは、仕方のないことだ。今の今まで、そうやってあれは生きながらえてきたんだからな」
「そうヨ。しゃァない、しゃァない」
 全ては遠い昔から続く、廻り続ける輪廻の輪の中のたった一部分。所詮、通過点にしかすぎない。正常な世界を、正常な刻を、正常な運命を、今もこの先も営んでいく為に必要な、“必要最小限”の犠牲。
「……理屈では分かってはいるのだがな」
 だが、どうしても。
 この輪廻の渦に巻き込まれていく小さな犠牲者たちを、その目で見つめるというのは〈大神術師アル・シャ・ガ〉には心苦しいものがあった。その現実から目を背けたくはなるのだが、こればかりは業を課せられし者の運命。
「……」
 決して目を背けてはならない。
 因果律に不用意に干渉し、歪めるという行為は決してしてはならぬこと。
 そうすれば、世界の均衡が崩れる。
 世界が、終わるのだ。
「ただ堂々巡りを、見て見ぬ振りをしなくてはいけないのか」
 けれども同時に、〈大神術師アル・シャ・ガ〉は考えてしまう。正常な刻とは何か。正常な運命とは何か。世界の為に捧げられる必要最低限の犠牲は、本当に必要なものなのか。そもそも犠牲を払い続けるだけの価値が、この世界にはあるのか。
 その問いに、答えが出ることはないのだろう。価値とは人それぞれの主観でしかなく、それだけの価値があると言う者もいれば、価値など無いと言い切る者も居るのだから。
「そう気を落とすな、〈大神術師アル・シャ・ガ〉。今更それを阻止することなど誰にも、どんなに強大な力を持ったお前さんにさえも、出来はしねぇンだからヨ」
 メクの大きな両翼が〈大神術師アル・シャ・ガ〉の華奢で幼く見える、どこか頼りない小さな肩を、月の光から隠すかのように包み込む。
「とはいえなァ、お前さんが何もしなくとも、アイツらがいずれ動き出すこったろうヨ」
「……アイツら?」
「お楽しみは後にとっておこうってもんサ。……まッ、俺がそれをお前に告げることになる時にゃ、お前も既に動きだしているだろうがヨ」
 メクはケケッと笑う。
「教えてくれないのか。ケチだな、お前も」
 夜空に浮かぶ三つの満月が放つ、星の光を打ち消す光。月光が差し込む祭壇には、二つの暗い影が落とされた。