【序章 聖獣使い】

3 猛獣、クルスム


「なんてこったぁ、ここまでウザってぇほどに華々しいたぁなぁ。だが、その割にゃぁ、つまんねぇモンだな、王都ってのはヨ。まっ、元から期待しちゃいなかったけどな」
 本人は独り言のつもりで言っていたのだろうが、独り言であるわりにはその声量はとても大きく、当然のように周囲の注目は一斉に彼女へと注がれていったのだった。
 ここはシアルン神国に唯一存在する風俗街シャレーイナグラ。踊り子や売女ばいたが犇めき合う、夕暮れ時の風俗街シャレーイナグラの裏通り。人目を一切気にすることもなく、道のド真ん中を白銀になびくたてがみを持った獅子と共に蟹股大股で歩くその女性は、どんなに煌びやかで露出の多い衣装に身を包み、金銀玉様々の装身具で着飾った、一見婀娜っぽくも己の醜態を恥ずかしげもなく晒しているような踊り子たちとは比べ物にならないほどに、悪目立ちしていた。
 彼女の名はクルスム・ルグ。クルスンを貫くルグ、そんな原義のある名前だ。
 山々に囲まれたシアルン神国きっての辺境の地、サラネム。彼女はそんなサラネムで数多の猛獣たちと共に暮らす猛獣使いの一族、ラムレイルグを治める族長ダグゼンの一人娘で、一族の中でも唯一の女の猛獣使いであった。右肩に刻まれた「風雷ノ紋章」と、切っ先は風を纏い、そして 眩まばゆい雷光を放つといわれる伝説の短剣、結界破りの「ブリュンナルカ」を腰に携える、列記とした〈風雷ノ聖獣使いシラン・サーガ・キウ〉でもある。
 女性にしてはキツイ顔立ちで、左頬には四本の猛獣に鋭い爪で引っ掻かれた傷が古傷として残っている。 透き通った緑色の瞳には強い意志の光を湛え、適当に後ろで結われ無造作に伸ばされた長い金色の髪は、光に照らされるたびに猛々しい光を放っている。そして、男に囲まれて育ってきたが故に、その性格、言動は乱暴で粗忽。要するに男勝りだった。
 必要以上の愛想もなく、山と森と猛獣だけをこよなく愛する自由人クルスムが、よりによって何故毛嫌いしている王都へと足を運んだのか。それは「こんなド田舎に、これ以上居られるモンか!」と、サラネムを飛び出して行った、今ではシアルン神国猛獣部隊の隊長をやっていると噂の旧友に、手合せを願われたからであった。
「さて、あの遅刻魔が遅刻しなけりゃいいがな」
「賭けようじゃねぇか。俺は遅れない、に十ガルッデ(=十円)だ」
「ウィク、あんた、あの遅刻魔のことを、昔ボロクソ言ってたじゃねぇか。アタシゃ無論、遅れるに十五ガルッデだね」
 旧友との待ち合わせ場所は今、クルスムが居る風俗街シャレーイナグラにある酒場。そこに一日の務めが終わり次第、あの旧友は一番の相棒である猛獣を一体連れてくるらしい。と手紙には書いてあった。
 こっちも負けたかぁねぇからな、とクルスムが王都に連れてきたのは、クルスムにとっての一番の相棒〈風雷ノ聖獣シラン・キウ〉のウィク。雷電を纏った白銀に輝く鬣を風に棚引かせながら、地を走り、新たな風を起こすとされる伝説の獅子、聖獣だ。
 全速力で走れば大規模な竜巻を引き起こせるとも言われているが、クルスムはウィクが竜巻を起こした所などこの二〇年間で一度も見たことがない。だがクルスムは、ウィクはただ本気を出していないだけであって、その気になれば伝説通りのデッケェ竜巻なんて簡単に起こせるんじゃないのか、と考えている。
 聖獣が獣でありながらも理性があり、そして人語を自由自在に操れている時点で、〈聖獣シラン〉という生き物の存在は、人知を超えていることは明らかだ。
 バカなアタシが考えたトコで、なーんも分かる訳がねぇ。神という存在をそこまで信じていないクルスムでも、聖獣は何でもアリな化けモンみてぇな存在なんだという事だけは信じていた。そして、それを使役できる立場にまだ八つだった頃にどういう運命のめぐりあわせかそうなっていた自分が、また怖くもあった。
 まっ、考えた所で答えは出ねぇんだしヨ、運命に身を任せ、成り行きに身を任せってのも悪かぁねぇだろ。
「てかよぉー、もうすぐ三十だって女に、こーんな長旅をさせるたぁどういう了見なんだってのヨ、あのクソ野郎は。なぁ、ウィク?」
「まだ三十。若い若い。そんぐらいで愚痴ってるような奴が、将来ラムレイルグの長になるとは、怖いもんだな。あのダグゼン氏にも、笑われらぁ」
 獅子が喋った、という事に驚いたのだろう。周囲の視線が更に白くなるのを、人の感情の変化に鈍感なクルスムでさえも感じ取った。
「うっせ、ばーか。おら、先を急ぐぞ」
クルスムはウィクに向かってそう言うと、蟹股で先を急いぐのだった。






 約束の酒場に辿り着いたときには、既に日も暮れていた。
 アイツが来るまでの間、ちょっくら酒場の中でゆっくりでもしてようかねぇ、という邪念が一瞬クルスムの頭の中を過ったが、やめた。所持金は十五ガレティグと四五二〇ガルッデ。帰りの分の出費を考えれば、そこまで余裕も無い。それに酒豪であるクルスムは、一度酒を飲みだすと酔うまで気が済むまで、酒を飲むのをやめなくなるのだ。
 きっと王都の酒場ってンだから酒もボッタクってんだろうし、アッという間に散財しちまうぜ。
 そんなこんなで取り敢えず酒場の前で、ウィクと共に旧友を待つことにしたのだった。
「……」
 そうして一チグム(約一時間)ほど経った頃。酒場の裏手から、悲鳴が聞こえたのだった。
「なんだか、イヤーな予感しかしねぇんだがな。それは俺だけか」
 のそり、と地べたに横たわらせていた巨体を、ウィクは起き上がらせる。
「アタシも同感だよ。さあウィク、野次馬精神で行くとっするか」
 我先にと駆け出すウィクを、クルスムは追いかける。そして辿りついた酒場の裏手。そこには怯えた形相の、男であるわりには細っちい体躯をした女々しい青髪の男と、同じく細っちい体躯をした茶髪の男が、兵士のような恰好をした一人の男に追い詰められていた。怯えているほうは二人とも、竪琴を持っている。ということは、吟遊詩人である可能性が高い。吟遊詩人がまた何故ここで、それも兵士なんかに捕まってンだよ。クルスムは疑問に思う。この風俗街は、本来兵士たちがいるはずである王宮からは幾ら同じ王都の中とはいえ、距離で言えばそれなりに離れているのにも関わらず。
「クルスム」
 ウィクがブルッと身震いをした。
「なんだい、ウィク」
「見えるか、あそこ」
 ウィクの視線の先には青い髪の男が居た。
「あの男の右手の甲だ、流水ノ紋章がある」
「ということは、アイツは〈水ノ聖獣使いシラン・サーガ・セク〉サマってなわけか。それで、そいつの足下で怯えてるのは……」
 クルスムは目を凝らす。青い髪の男の足元、膝を折って身を縮める角の生えた馬のような獣の姿が、見えたような気がしたのだ。
「〈水ノ聖獣シラン・セク〉、一角獣のシクだ。間違いない」
 クルスムは徐に、袖をまくりあげる。
「へぇ……」
 アタシ以外の〈聖獣使いシラン・サーガ〉と初のご対面、ってトコか。なんて無様なお姿だこと。さぁてっと。腕が鳴るぜ。
「一暴れしてやろうか、クルスム」
「そっ……」
 そのつもりだ。
 続けようとした言葉は、断末魔の悲鳴により掻き消された。
 振り下ろされる刃が茶髪の男の頭を叩き割るように、切り叩く。ピリッとした何かが大気中を駆け抜け、続けざまに獅子の吠え声が轟く。クルスムには分かった。今のはウィクの吠え声ではないことを。他の獅子の吠え声であると。だが今この場には、ウィク以外には咆えるような獣の姿は見当たらない。それがとても奇妙な点だった。
「お前も、この男のようになりたくないのなら、大人しく付いてくるんだな」
 硬直する〈水ノ聖獣使いシラン・サーガ・セク〉の男、その男に対して刃を向ける兵士。兵士が頭に被っているヘルメットの下からは、老人を思わせるような白い髪が覗いている。だが、顔は見えない。けれども、聞こえた声は若かった。それに、下手をすれば少し声の低い女とでも通用するような声だ。
「……驚いたぜ」
 そんな緊迫した場面の最中、クルスムの傍らに立っていたウィクは、場違いともいえる感嘆の声を洩らす。「あの兵士、只者じゃないぞ」
「……ハァ?」
「ヒラの兵士じゃねぇっつーことだ。兵士の中でも、多分上の階級のヤツ。あの剣は、上流階級の兵士だか騎士に与えられる剣の一つだとかなんとか聞いたことがあるぞ。十本剣とか、なんとかな。さっきの吠え声も、あの剣からだ」
「なんで、剣が吠えんだよ?!」
 そしてクルスムもまた、状況を考えずに大声を上げるのだった。兵士はクルスムたちのほうに向く。兵士と目が合ってしまったような気が、クルスムにはした。
「思いだしたぜ。ありゃ、古の時代に奪われた山の女王の神器が一つ、〈獅子レオナディア〉だ。まだ存在していたとはなぁ、思ってもなかったぜ」
「感心してる場合じゃねぇぞ、ウィク!」
 相手の口元が少しだけ強張り、剣を握る手が力むのを、クルスムは見て捉えた。臨戦態勢に入ったのだ。クルスムもまた、ブリュンナルカの柄を静かに、だが確実に握りしめる。
「〈聖獣使いシラン・サーガ〉が二人揃ったとは、都合がいいってもんだ。……ケケッ……」
 ウィクも身を低くし、構えの体制をとる。毛並みが逆立ち、鬣が雷電を纏い、バチバチと音を立て始めた。クルスムも勢いよく、ブリュンナルカを鞘から引き抜く。
「かかって来いや、このクソ野郎!!」
 威勢よく身を前へと乗り出したクルスム。……だったのだが、その途端、後ろから羽交い絞めにされるような衝撃に襲われる。
「どういうつもりなんだ、〈獅子レオナディア〉!」
 耳元から聞こえたのは、聞き覚えのある男の声。振り返ると目と鼻の先に、見覚えのある面影を残した顔があった。
「テッメェ……」
 そうこうしているうちに、問題の兵士が逃げていく。その姿は、闇の奥へと消えていった。
「久しぶりだな、クルスム」
 ニタッと笑う旧友。だが、その目には焦りの色が見て窺える。それも当然だ、みすみす犯罪者を逃したのだから。
「だが今は、ゆっくりと昔を思い出しながら感傷に浸るヒマはねぇみてぇでな。そこで気を失ってるその男を、ウィクの背にでも乗せてくれ。俺が案内する。ついてこい」
「ちょっと待てってンだよ! さっきのあいつは、あの兵士は野放しってか?! テメェも王宮に仕えてる云々かんぬんなら、追いかけなくていいのかよ!!」
「大丈夫だ、あとで上が手を打つだろうさ。犯罪者を法外の措置で裁くのは俺の役目じゃない、パヴの役だ。……それと、だな」
 旧友は、羽交い絞めにしていたクルスムを開放する。そして「落ち着け」と宥めた後で、どこか気拙そうに下唇を噛みしめながら、クルスムと目を合わせることなく言った。
「すまねぇが、手紙の件は全部嘘だ。あれは全てお前を、王都に呼びだす為の口実だった。お気に入りの猛獣を連れていくとかっつーのも、全部ウソ。お気に入りの、とか書いときゃァどうせ、ウィクの野郎を連れてくるんだろうなーと思ったからよ」
「あァン!」
「そう怒るなよ。上からの命令なんだってば。やんねぇと、お前の首を今すぐこの場で物理的に斬り落とすって、パヴに脅されて。いいからその剣、しまえって」
「……ったくよ、パヴってのが誰だかは知らねぇが、アタシのこの、何日間の労力は一体なんだってんだい……」
「へ? ウィクの野郎が居るってのに、何日もかけて、ここまで来たってのか? お前も馬鹿じゃねぇかよ、クルスム」
「言われてみりゃぁウィクに乗れさえすりゃ一瞬でこんなとこに…………って、うるせぇ黙れゴルァアアアアアア!!」





「手合せは無しだって、何度も言わせるなよ」
「折角ここまで来てやったってのに、もう帰れって言うのかい、アンタは?! これじゃ骨折り損じゃねぇか!!」
「いや、帰れとは言ってない。というか、帰られたら俺が上から殺される」
「ふん、そうかい」
「……冗談抜きで殺されるから、本当に帰るのだけは勘弁してくれよ。この件だけはヘマ 扱こいたら容赦しねぇぞって、パヴに脅されてんだ……」
「そりゃひでぇ上官だな」
「ウィクの野郎まで、他人事みたいに言うなよ……」
「容赦しないったって、なにも殺すとは限らねぇだろうが」
「お前ら、何も知らないからそう言えンだよ。アイツだったら本当に斬るからな」
「はは、そうかい」
「だから、クルスム!」
 シアル王宮の敷地内。荘厳さを纏った宮殿の近くに佇む〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉事務所兼住宅。その大きな扉を開けた、その目と鼻の先にある広間。クルスムと〈水ノ聖獣使いシラン・サーガ・セク〉と思しき吟遊詩人の男は、ファルロンによりあの酒場から引っ張り出され、ここに連れてこられたのである。
 先ほどの一件であの酒場はてんてこ舞いになっているらしい。急遽駆けつけた憲兵たちによって今は、一段落しているようだが……あの兵士は行方を晦まし、残っている筈である茶髪の男の遺体すら、その場からはなくなってしまったそうだ。どこまでも不可解な話である。
「……そっれにしても、やっぱ納得いかねぇな」
 例の青髪の吟遊詩人は竪琴を抱きかかえたまま、広間に設置されている二対の長椅子の一脚に縮こまるように座っていた。フーガル、という単語を一人延々と呟き続けながら。そして、そんな男の傍らには、ビクビクと怯えている淡い水色の毛並みを持った一角獣がある。あの男が〈水ノ聖獣使いシラン・サーガ・セク〉だと仮定した時に、あの一角獣は〈水ノ聖獣シラン・セク〉のシクだといえるだろう。
「さっきの兵士、あれはなんだったんだい? レオナディア、とか言ってたが」
 そう言いながらクルスムは青髪の男の横に、どかっと座る。ウィクはそんなクルスムの足元に、どっしりと巨体を伏せた。
「そういえば」
 お世辞にも目付きが良いとは言えないファルロンの目が、じっとクルスムを見つめる。その視線は、クルスムの右肩口に刻まれた風雷ノ紋章を見つめていた。「お前、〈風雷ノ聖獣使いシラン・サーガ・キウ〉だったよな」
「ああ。見りゃ分かんだろ」
 話を逸らすなよ、と毒づくクルスム。だがそんなクルスムを無視するように、ファルロンは次に青い髪の男を見た。
「そんでお前。〈水ノ聖獣使いシラン・サーガ・セク〉、アルヴィヌの出の吟遊詩人、スザンで間違いないな」
 青髪の男――名をスザンという吟遊詩人――は「何故知っているのか」という面持ちで、ただ呆然としてる。アルヴィヌというのは王都とサラネムの中間にある、かつては栄えていた都だ。
「……僕が、スザンです。でも、何故」
 アルヴィヌには吟遊詩人になった者が多いと、クルスムは噂で聞いたことがあった。芸を身につけることが出来た幸運な者は、皆一様に吟遊詩人となり、 荒すさんだ故郷を捨てて旅に出るのだという。いずれは貴族などの金持ちに仕え、安定した生活を送るために。貧乏のあまり、人間以下になり下がった者たちの集まる路地裏から、抜け出すために。
「王宮を護る十の剣、アルダンを舐めてもらっちゃ困るぜ。吟遊詩人ひとりの身元を割り出すくらい、朝飯前だ」
 と、そんなとき。突然ため息を吐くファルロン。そして扉のほうに向かい「そこに居るのは分かっているんだぞ」と言う。
「そこに屯していないで、さっさと入ってきたらどうだ」
 ファルロンの言葉と共に、静かに開けられた扉。そこに居たのは、緑色の目の青年と四十代くらいの隻腕の女、それと紅い髪の少女の三人だった。
「ちょっと遅れたけど、すまへんなぁ」
 一番年上と見られる隻腕の女は、そう言うとニコっと笑う。反省しているような素振りは特にない。そして彼女は、クルスムの向かいの椅子に座った。続いて青年と少女の二人が広間に入ってくる。なんとも言えない微妙な空気感が、その二人の間には漂っていた。
「大丈夫だ。俺たちも今さっき、ここに着いたところだしな」
「それで、そこのお嬢さんがファロンちゃんのゆうてた〈風雷ノ聖獣使いシラン・サーガ・キウ〉のクルスムさんと、その〈聖獣シラン〉の……ウィク?」
「そうだ、俺ぁウィクだ」
「アンタの言うとおり、アタシが〈風雷ノ聖獣使いシラン・サーガ・キウ〉、クルスムだ」
 そう言いながら、クルスムはムッと短い眉を顰める。
「あー。なんで知っとるんや、って顔ねぇ」
 うふふ、と冗談めかしに笑うのは隻腕の女。
「ああ、そうさ。初対面な筈のアタシのことを何故か知っていることといい、ファンの野郎がそこの吟遊詩人の名前を当てたことといい、全てが不気味で仕方がないってモンさ」
「それもそうでしょうねぇ。ウチも手縄を掛けられて、王宮の地下牢に連れてこられたときは、同じことを思ったもんや。なんで王宮仕えのお偉いさんが、たかが隊商の用心棒如きの名前を知ってるんや、ってなぁ。……まっ、そんなこんな詳しいことは、明日か明後日にまとめて話されるだろうから」
 隻腕の女はそう言いながらも、どこか開き直っているかのような、あっけらかーんとした笑顔を浮かべる。そして自分の名を名乗るのだった。
「ウチは、ウチ個人の名前は、ヴィディアや。ヴィディア・ヘングラ。けどな、仕事の時は〈革新リボルヴァルッタ〉って呼んでぇな。これからあんさんら含め、ここに居る全員、その他関係者には王宮より多大なる迷惑を掛けることになるらしいんやけど、宜しゅう頼むわ」
「ちょっと待て」
 多大な迷惑、とは。
「ちょっと頭の足りないアタシには、アンタが今言った言葉の意味が全く以て理解できないんだがよ」
「そんな気にしなくてもええんやで。実を言うと、ウチらもあんまり分かってないんよ。ウチも、ファロンちゃんも、そこのベンちゃんも、つい最近に説明されたばかりでなぁ。この件について、詳しく知ってるのは、パヴとキャスの野郎だけやろうし」
「……」
 クルスムにしては至極真剣な質問のつもりであったが、ヴィディアと名乗った隻腕の女に軽く躱された。とはいえ、知らないというの事実だと思われる。何故ならばすぐそこで、ファルロンが「俺に話題を振るな」というような顔をしているからだ。
「でも、どっちも情報出し渋っとるんよー。えっらい長い付き合いなこのうちですら、この件は信用されてへんみたいなんやからな。三下は必要以上に首を突っ込むな、ってあのパヴのあほんだらは抜かしよるし」
「じゃあ俺たちなんか、一生かけても聞けそうにねぇな」
「納得いかんわー、もう」
「納得など求めてない、ってパヴなら言うよな」
「それ、言われたわ」
「ははっ、やっぱりな」
 そんなこんなでこの事務所とやらに集まったのは、クルスムや青髪の男スザン、ファルロンを入れると人間は六人、聖獣は三体となった。
 ヴィディアと名乗った隻腕の女。彼女は〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉の隊員の一人だという。
 かつて〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉とは、シアル騎士団の中でも特に優れた能力を持った十名の騎士だけを寄せ集めて構成された特殊な組織であったという。だが現在はその成りを大きく変え、隊員は騎士に限らず、非常に優秀な傭兵や没落貴族の御曹司、偶然目をかけられた貧民の少年など、挙げたらキリがないほどに多種多様なのだという。けれども、そんな中でも唯一変わることがないものがある。それは、王族や政に深く関わりのある要人などを、その傍で護衛するという職務である。
 そして、ヴィディアでいう〈革新リボルヴァルッタ〉とは、〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉の中での呼称であり、〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉に所属する隊員に、国を治める女王たる《光帝シサカ》の手からそれぞれ与えられる剣の名でもあった。
 ファルロンも〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉のうちの一人であったらしく、《光帝シサカ》より賜った剣の名は〈咆哮ベイグラン〉。神国の猛獣部隊隊長も任されているらしい男には、「咆哮」という名はとてもお似合いのように、クルスムには思えた。
 そして緑色の目の青年の名前は、ベンス。アルヴィヌの特段に貧困が凄まじい地域出身の、孤児だという。彼もまた、二人と同じく〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉の一人である。剣の名は〈三日月ルヌレクタル〉。歳はまだ十五だというが、年齢に見合わぬ、大人歴然とした立ち居振る舞いを見せていた。身長こそまだそこまで高くはなく、十五の青年らしいどことなく華奢な体躯をしているのだが、隣に並ぶファルロンと見比べると、目付きや放っている雰囲気が明らかに違っていた。潜在能力が高そうだと感じさせる雰囲気を、自然に醸し出しているのである。
 だが、ヴィディアに言わせればそれは「単に感情表現が苦手なだけや」らしい。
 そして、ベンスの後ろに隠れるようにして座っているのがフリアという少女だった。鍛冶の町サイラン自治区の出身で、鍛冶の腕前は国一番だと謳われているあの鍛冶師シャンの娘だという。
 クルスムは一度、破損したブリュンナルカの整備を、シャンに頼んだことがあった。そのときに、密かに火事場を覗いていたあの時の幼子。それが今、ベンスの後ろに隠れている少女だということなのだろう。それにフリアという少女の左肩口に刻まれている火炎ノ紋章と、妖しい輝きを湛える紅い髪の色から察するに、彼女が〈炎ノ聖獣使いシラン・サーガ・レイ〉であることは間違いなさそうだった。そしてフリアが抱きかかえている、九本の尾が焔を上げている子狐。どうやらそれが〈炎ノ聖獣シラン・レイ〉のリシュであるようだ。
「フリアちゃんが〈炎ノ聖獣使いシラン・サーガ・レイ〉っちゅうことは、聖獣はこの子狐で間違いないんやろか」
 ヴィディアはフリアに対して、そんな疑問をぶつける。するとベンスの背後からは、か細い声で「はい」と答える声が聞こえてきた。
「……〈炎ノ聖獣シラン・レイ〉は、子狐なんやろか? でも、そんな話は……」
 ヴィディアがそう呟いたそのとき、フリアの腕の中でウトウトと船を漕いでいた子狐リシュが飛び起きる。リシュはするりとフリアの腕から抜け出し、飛びあがった拍子に空中で小さなその身を翻す。背中から床に落ちる、と誰もが思った次の瞬間、凄まじいほどに燃え盛る炎が上がった。
「なァッ!?」
 天井にまで届く火柱。だが、炎の威力の割には、熱が一切感じられない。それに、周囲の物が燃えるような様子もない。そして数十ピロン(数秒)が経つと炎は自然に収まる。そこには先ほどまでの子狐の姿はなく、ウィクと同じ大きさはあるかと思われる真っ白な体を持った、美しい九尾の狐が佇んでいた。九本も生えた尻尾の先にはそれぞれ、火が灯っている。そしてその狐――つまり、本来の姿に戻ったリシュ――は、尻尾の先に灯る火と同じくらいに明るい黄色の瞳で、ヴィディアをじとっ見つめたのだった。
「これで、満足か」
「ええ……」
「り、リシュは、子狐に化けることができます。あ、あと、滅多なことが起きない限りは、普段は子狐の姿でいるよう、私と、約束しています」
 慌てて立ち上がるフリア。彼女は棒読みでそれだけ言うと、リシュに向かって視線を送った。リシュは少々不満げな表情を見せたが、すぐにまた身を翻し、子狐の姿に戻る。そしてまた、フリアの腕の中へと戻っていった。
「それじゃ次。そこの青髪の……―――」
 ヴィディアが視線をリシュとフリアから、縮こまったままのスザンへと移す。と、そのとき。バン! と盛大な音を立てながら、乱暴に扉が開け広げられたのだった。
「あらー、噂をすれば独眼の水龍さん。わざと音を立てるだなんて、あんさんにしては珍しい」
「そういや、そうだな」
「……うげっ、パヴだし……」
「聞こえてんぞ、馬鹿犬」
「……っるせ!」
 ひときわ大きな物音を立て事務所にやってきたのは、“藍晶らんしょう”と呼ばれている藍色の羽織りを纏った二人組だった。
 一人は笠を深く被り、垂れ下がった長い前髪で顔の左半分を隠している人物だった。その人物の髪色は老人のように白ければ、また肌も乳のように白く、瞳の色は紫色と、これまた特異な見た目をしている。けれども、年老いているわけではない。当人の年齢は、二十そこそこ。それが、“白い射手”と呼ばれるシャグライ族の特徴。
 そしてクルスムは、その人物の顔にとても見覚えがあった。見覚えも何も、幼馴染だ。
「ユン?!」

 あいつだ。
 ユインだ。

「アンタ、ユンじゃねぇか! 生きてたんだね!! 山の人間はみんな、アンタは死んだと思ってたよ」
「……んあ?」
 サラネムの山には、ラムレイルグ族とシャグライ族の怪我や病気の面倒を見てくれる、薬師というものが一人だけ存在している。それが、メズンという名の偏屈極まりないクソジジィだ。そんな偏屈ジジィの弟子が、このユインだった。
「アタシだよ、クルスム! 忘れたたァ言わせねぇからな!!」
「……く、クルスム?! なんでお前がここに居るんだよ!? それにウィク、お前も!」
 呑み込みは早いし、何でもどんなことでもユインは、全てそこそこにこなしてみせる。万能の天才。だが、それ以上に性格に難のある、まさに天災という言葉がふさわしい奴。けれどもある時に突然山を去って以来、行方知れずとなっていたし、誰もが死んだものだと思っていた。けれどもそんなユインが今、自分の目の前にいる。
「そりゃアタシのほうが訊きてぇくれぇだよ!」
「そうだ! 俺たちゃワケも分からねぇまま、ファンのクソ野郎にここまで連れてこられたんだ!」
「おい、ウィク! クソ野郎ってのはどういうこッ……――」
「事実、クソ野郎だから仕方がないだろ。ファルロンさんよ」
「ユン! テメェまで酷ぇ物言いじゃねぇか!!」
 そしてもう一人の藍晶を着た人物は、ぼさぼさの焦げ茶の髪に浅黒い肌と無精髭、それから右目に革の眼帯を付けていた、見るからに胡散臭い男だった。歳はヴィディアと同い年くらい、四十かそれ以上だろう。
「それにしてもや、パヴ。あんさんは昨日から、一体どこをほっつき歩いとったんや。キャスが居場所が掴めないとかなんとか、朝からうるさかったんやで?」
 呆れているのだろう。ヴィディアは溜息まじりにそう言いながら、眼帯の男を睨む。
「ちょっくら情報収集をしててな」
「はぁ。どうせまた、ギャランハルダにでも行ってたんでしょうに」
「そうそう、ギャランハルダ。エレナの姐御の尻をわし掴んだバカな男が居てさ。独眼の水龍さまと来たら、その痴漢の両手首を問答無用でバスッと斬り落としてよ。店の中は『もっとやれー』だのなんだので大騒ぎになってさ。ついさっきまで、エレナの姐御に説教喰らってたんだ。俺も巻き添え喰らって、たまったもんじゃなかった」
「喋り過ぎだぞ、ユイン」
「事実を述べてるまでさ」
 “パヴ”と先程から呼ばれている、飄々として掴みどころのないこの男。“パヴ”という呼び名と、“独眼の水龍”という通り名。クルスムには、思い当たる節が一つだけあった。それにくすんだ蒼い目、右目を隠す皮眼帯。間違いないと、確信した。
「なぁ、アンタ。まさか、だけどよ。……独眼の水龍、パヴァルか?」
 眼帯の男は、驚いたというような顔をする。そしてすぐに、どこか嫌味ったらしいニタッとした笑みを浮かべた。
「そうだ。俺が独眼の水龍こと、〈聖水カリス〉パヴァル・セルダッドさまだ。嬢ちゃん、サラネムの人間にしては珍しく、王都について詳しいじゃねぇか」
 独眼の水龍、パヴァル。流れる水のような剣捌き。打ち付ける滝のように力強く振り下ろされる剣戟。その剣術の腕前を水の神に魅入られ、神なる力と引き換えに右目を失った剣豪、というのがクルスムが聞いたことのある噂のもっぱらだった。だがクルスムはずっと、誰かが作り上げたでっち上げの類だろうと思っていたのだが、噂はあながち外れでもなかったらしい。現に独眼の水龍は実在していたのだから。
「いやぁ、本当にあのパヴァルが居たとは。それに、本物に会えるだなんて夢にも思わなかったよ」
「俺も、あのラムレイルグ族族長ダグゼン氏の一人娘が、こんな美人になってたとは夢にも思わなかったな。少なくともヴィッデよりー……」
「……あれ……パヴにクルスムなんて紹介したことあったっけ……?」
「パヴ、あんさん、自分が何を言ってるのか分かっとんの?」
 ファルロンの小さな独り言は、ヴィディアの盛大な舌打ちの音により揉み消された。舌打ちと共に、怒りに満ちたヴィディアの視線がパヴァルには向けられる。だがパヴァルはそれを軽く躱し、バンッとユインの背中を平手で叩いたのだった。「……痛ァッ!」
「それよりも重大な問題が起きてな。ただでさえ神経質で、疑り深いがクソドジ間抜けの役立たずな上にグズのユインの剣が、誰かに盗まれちまったらしいんだ」
「おいなんだよ、そのクソドジ間抜けって!!」
「〈獅子レオナディア〉が?!」
  素っ頓狂な声を上げたのは、ファルロンだった。
「え、あ、じゃあ〈水ノ聖獣使いシラン・サーガ・セク〉の連れを殺したのはユン、お前じゃないってことか!?」
 なんのことだよ、とあらぬ疑いを掛けられたユインは首を傾げる。「勝手に濡れ衣を着せてくれるな」
「ははは、すまねぇ。てっきり俺、ユンだと思ってたから」
「……酷いな。呪い殺してやる」
「すまねぇって! だからそう、俺のこと嫌わないでくれ!」
「それにユンと俺は、今日一日中カレッサゴッレンのほうをブラブラしてたからな。シャレーイナグラの酒場の一件に関しては、ユンは一切関係ないだろう。だが、盗まれた〈獅子レオナディア〉は悪用されたってことだな。とはいえ幸運なことに、犯人のおおよその目星は付いている」
 にたぁ、とパヴァルは笑う。ヴィディアはその話に、勿論食い付いた。
「へぇ。それは、誰なん?」
「……俺が、それを言うとでも思ったのか?」
「もしかするとー、とは思うたわ。けど無駄やったな」
 話についていけない。それはクルスムだけでなく、フリア、スザンも同様だった。ただ一つ会話を聞いていて気が付いたのは、この〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉というのは、相当おかしいということだけだった。
 まるで友人や家族と話しているかのように接する隊員たち。そこに信頼関係はあるのだろうが、仕事だという意識や、緊張感というのはあまり感じられない。それに隊員たちは、皆がなんとなく藍晶を羽織っているものの、それが制服であるというわけでもなさそうである。また、隊員たちの個性も様々で、その個性も各々尖り過ぎている。つまるところ、全てがおかしいのである。まさに変人の巣窟。巣の中に放り込まれたばかりである人間が、変人狂人たちの話についていけるはずもなかった。
「で、ユンちゃん。剣がないのは〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉として有り得ないことや。まず、キャスに何を言われるか分かったもんじゃないし、なにより剣は百何十代と受け継がれてきた国の宝物な上に、《光帝シサカ》さまからの授かりもんや。替えの効かない大事な代物なんやで。……大丈夫なんか?」
 ヴィディアのその一言で、その場にいた全員の視線が一斉にユインへと向く。けれどもユインは、たじろぐばかり。けれどもそんな中、場の空気を無視して一人の男が爆弾を投下した。
「俺達が今ここで、どうこう言ったところで剣は戻って来やしない。まっ、〈神護ノ十剣トウィンガル・ラン・アルダン〉が十本剣でなくなるだけだ。九本剣ってことは……神護ノ九剣クィンガル・ラン・アルダンか。面白ぇじゃねぇか」
 パヴァルのとんでもない発言に、開けた口が塞がらないと言う顔をするベンス。彼は何かを言おうとした様子だが、それが声になる前に、発しようとした言葉自体が頭の中でパヴァルの声にかき乱され、消散してしまったらしい。ただぽかんと、間抜けに口を開けている。
 そして、それでもパヴァルは言葉を続けた。
「ユイン、お前もそれでいいだろ」
「いや、あ、あの、その」
「喜べ、お役御免になるんだぞ? そしたら、山に帰してやろう。きっとメズンも、有能な弟子が帰って来てくれて大喜びすることだろうからな」
 にやっ。
「それでいいだろ? やないんよ、このアホンダラ!」
 ヴィディアの平手がパヴァルの頭を襲う。パヴァルのドタマからは、パァン!と盛大に音が鳴った。だが当の本人は特に痛がることもなく、ヴィディアに叩かれた後頭部をさすっているだけ。痛くも痒くもなんともない、そんなところなのだろう。
「俺としては、この手のかかるド間抜け天災の面倒を見なくて済むようになるのだから、助かるんだがなぁ。ただでさえ、まだあのラントのクソボケ野郎が一人前になってくれてねぇ現状があるわけだしよ。それにメズンのもとに帰ってくれた方が、世のため人のためになるってもんだろ」
「まーた、そんなことを言って。エレナちゃんが怒るで?」
「エレイヌは関係ないだろう」
「そんなことないわよ。ユンちゃん特製の軟膏を一番愛用してるのはエレナちゃんなんやから」
 その後も、ヴィディアとパヴァルはくだらない言い争いを、五ダル近く続けた。けれども、そんなくだらない言い争いも、ウィクの一声で幕を下ろす。
「盗まれた剣は〈獅子レオナディア〉だろ? もし山の女王さまの伝承どおりなら、あの剣には意思がある。あの剣が主をユイン、お前だと認めてるんだったら、お前が呼べば戻って来るんじゃないのか」
 確証はないが、そんな話を俺は聞いたことがあるぞ、ともウィクは付け足す。たまには女神に仕える聖獣らしく、役に立つこともあるじゃねぇか。嫌味まじりの言葉をウィクに放ったのは、ファルロンだった。
「おいゴルァ、遅刻魔。俺たちを騙しておいて、その言葉はねッ……――」
「んじゃ早速やってみようぜ、ユン」
「おい、待てよ。いきなり過ぎだ。コッチにも心の準備というのがあるんだけど」
 随分と調子のいいファルロンを睨む、ユインの目。そんなユインの紫色の瞳には、一瞬ではあるが殺意の火が灯った。
「いいじゃねぇか別に」
「いや、よくねぇよ」
 ユインの声色は徐々に、苛立ちの混ざった冷淡なものへと変わっていく。だがファルロンは、そんなことになど一切気付いていないような素振りをし続けている。というよりも、本当に気付いていないのだろう。
 そんなファルロンを見ながら、ヴィディアは呆れた面持ちで溜息を吐く。パヴァルもまた腕を組み、ファルロンを片方しかない目で睨んでいる。ベンスは眉を一文字にしたまま、微動だにもしない。そんなベンスの後ろに隠れるフリアは挙動不審のまま、赤紫色の瞳でその場をただ見守っているだけ。そしてフリアの胸の中で眠りに落ちている子狐リシュは、安らかな寝息を立て始めている。一方、スザンは怯える鼠のように縮こまったまま動く気配を見せず、シクもまた呆然とスザンの横に佇んでいるだけだった。
「……」
 クルスムは、自身の足元に伏せているウィクを見る。こちらも呆れ果ててもう関わりたくないのか、冷たい床の上で、居眠りに入る態勢を整えていた。
「ユン、アンタは何を渋ってるんだい。レオナディアって呼びゃぁいいだけの話だろ。れーおなーでぃあーって、なぁ?」
 クルスムはうんざりとした目でユインを見据え、悪態とも愚痴ともつかぬ台詞を零す。はぁー、と溜息を一つ漏らしたそのとき。外から女と思しき、甲高い金切り声が上がった。
「きゃああああああ?! って、これユン兄の剣じゃん! なんだよ、なんなんだよ!!」